第七話【修羅の道】

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「頭ガチガチの理系男子が、覚醒して宇宙の真理を悟り、ヒーラーになった話」

 

第七話 修羅の道

【前回までのあらすじ】

世界のしくみを解明したいという思いから、自分の進路を考えるようになり徐々に現実的な方向にシフト。世界を変えたいという希望を胸に化学メーカーに就職した僕。心機一転、見知らぬ土地での社会人生活が始まろうとしていた。

【修羅の道】

入社式、僕は新入社員らしく希望とわくわくを胸に本社に向かいました。

お堅い入社式を終え、本社での研修を終えた後向かった先は、千葉県の海沿いのホテルでの缶詰め研修でした。

研修期間は1週間。社会でのマナーや心得を学ぶ。同機は数十人いましたが、意識高い系が1割、まじめ系が6割、バランス取れてる系が2割、パリピ系が1割と、大手メーカーとしてはバランスが取れた比率だと思いました。

僕がバランス取れている系であることは言うまでもありません。

缶詰め研修の最後に、各自の配属先が発表されました。

日本各地に拠点があり、各々がそれらの拠点に配属され散らばっていきます。

僕は希望通り材料研究所に配属されホッとしていました。

同じ配属先の同期は気が合う人が多く、良いところに配属されたなーと安心していました。

会社の寮で生活をすることになったのですが、部屋の広さは4畳半、お風呂・トイレ・洗面所共有、食堂ありという聞く人によってはげんなりするような条件かもしれませんが、大学生時代を同じような環境で生活しており、同じアパートの住人がほとんど外国人で、彼らと結構仲良くなっていた私にとっては全く問題ありませんでした。

実際そのことを、私は体力・適応能力があり、将来は海外に行く経験がしたいと履歴書のアピール欄などに書いていたくらいです。

お風呂は銭湯のように広かったし、食事も安く食堂でいただけていました。

配属されてしばらくは工場での3交代研修があり、それが終わると研究所に配属され、研究所での研修がスタートしました。

研究所の部長たちが各部署の説明をしてくれました。

部長の雰囲気や開発テーマでおおよその部署の雰囲気や、自分がその分野に興味があるかどうかを掴んでいきました。

その中で一番この部署に行きたいなーと思ったところと、ここには行きたくないなーという部署があったのです。

行きたい部署はどちらかというと基礎研究に近いところの検討をしていました。

行きたくないなーと感じた部署は半導体関連の材料を開発する部署であり、研究というよりは泥臭く開発するといったイメージです。またここはかなりの激務であるということも噂されていました。

同じ研究所でありながら各部署で雰囲気は全く異なるものです。

三か月の仮配属を終えたのちに正式に配属となる予定です。

そして私の配属先は、なんと希望通りの部署で、先輩や上司の方々も賢く穏やかな方が多くて、本当に良い運がいいなーと思っていました。

ちょうどそのころ、街コンというものが始まりだした頃で、見知らぬ土地に配属された僕たちは人脈形成のために出かけることもありました。

プライベートと仕事が充実し、楽しい研究をしてお給料を頂ける。何て素晴らしいんだ!と感じていました。

そう思っていたのも束の間、その年は、新しい研究所長に代わった年でした。

従来であれば、研修先の部署に本配属されるのが普通だったのですが、新所長が「今年から仮配属先と本配属先を分ける」と言い出したのです。

それは今の心地が良い部署から、本配属時は別の部署に行かなければならないことを意味しています。

僕は「えーー、聞いてないよー」と思っていました。

そして発表された正式な配属先は、、、

なんと一番行きたくないと思っていた激務の部署だったのです。

しかもかなりの人手不足だったらしく、その年はその部署に3人配属されるという異例の年でした。

これは最初で最後の出来事です。

僕はいや、確かに体力と適応能力あるって履歴書に書いたけども、、、と非常にがっかりしていてしばらく立ち直れませんでした。

これから就活をされる方がもしこれを読んでいたら、必要以上に適応能力と体力をアピールするのはやめましょう。

激務な部署に配属される可能性が高いです笑

本配属先に連れていかれた僕は直感でさとりました。

「ここはやばい」

雰囲気が全く違うのです。

負の雰囲気が漂っています。

そこの先輩方も「こんな部署に配属されて運が悪いね、ワハハ」という感じです。

僕は正直この場所でやっていく自信が全くなくなりました。

そしてここでの仕事はというと、新しく研究テーマがもらえるわけではなく、ひたすら製造をすることでした。

毎日同期と一緒に同じ樹脂を作り続けます。研究員として入ったのにひたすら製造ばかりしている毎日。

他の部署の同期が既に新しい研究テーマをもらっている中、自分はひたすら製造。

配属されて半年くらいは製造が続きました。

天国から地獄におちたとはこうゆうことを言うんでしょうか。

その部署で過ごしていく中で徐々にわかってきました。

常に悪口、陰口、嫌味、嫉妬、虚栄心、悲壮感、プレッシャーが渦巻いているのです。

朝会社に行くだけで気分が落ち込みました。

面白くもない他人をネタにした笑いに愛想笑いをしなければならない僕。

そんなところに長時間いて働いていると、徐々に自分の心と顔が歪んでいくのを感じました。

あんなに透明で純粋だった僕が、徐々に黒く浸食されていっているのを感じました(笑う所です)

この部署の価値観や枠に無理やりはめ込まれ、自分というものがすり減ってなくなっていくような感覚。

またこの部署は人の異動も激しく、営業が足らなくなれば研究からすぐに補填されてしまうという状況。

これまで研究をするために学んできたのに、営業に行ってしまうと材料開発ができなくなってしまうのです。

それも上の方の一言で決まってしまうような世界です。

それからの僕のプライベートは別人のように破天荒になっていきました。そうでもしないとやっていけなかったのです。

平日夜から飲みに行ったり、衝動買いを繰り返し、物は散乱、寝に帰る部屋は散らかり放題。。

どれだけものを買っても、どれだけ飲みに行っても、遊びに行っても、埋まることのない不足感。満たられることがないのです。

仏教では六道というものがあり、この世界の6種類の階層を示しています。

天道、人間道、修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄道

まさしく僕は餓鬼道、地獄道まで落ちてしまっていたのです。

そして自分がこんな目にあっているのは何かの罪を償っているかのような罪悪感。地獄道。

それでも仕事は何とか研究で自分の功績を残そうと必死に働きました。

それは修羅道であり、毎日戦いです。

必死に自分の中にぽっかり空いた穴を、必死に努力して採用された成果で満たすように頑張りました。

そして徐々にですが、顧客の採用も増えていき、一目置かれるようになっていきました。

それでも一つうまくいけばさらに次という感じで、きりがないのです。

常に開発納期に追われる日々。うまくいったときは少し調子に乗った部分もあったかもしれません。嫉妬によって上の人や一部の先輩からはらわたが煮えくり返りそうになるほどの嫌がらせや仕打ちをされることもありました。

また開発はいつもうまくいくとは限りません。

せっかく大きな仕事を任せてもらってもうまくいかず、干されてしまうこともありました。

そして重圧に押しつぶされそうになると、夜に動悸がして眠れないこともありました。

でも仕事がうまくいって、自分の開発品が採用された時には達成感と解放感を感じました。

【自分の価値=仕事の成果】

僕の中でこの観念が揺るぎのないものになっていくのを感じていました。

それでもめげずに開発を続けていき、重要顧客を任せて頂けるようになっていきました。

そして気付けば入社してから10年もの歳月が経とうとしていました。

その間、僕はその土地で出会った人と結婚をし、娘も一人できていました。

家族といる時は幸せを感じていました。

家族の支えがなかったらきっと重圧に押しつぶされていたことでしょう。

家族ができたことで責任感が増していき、これまで我武者羅に取り組んできたことで知識と経験も増えていき、仕事の効率も上がっていくようになりました。

これまで我武者羅になってやってきたことは無駄にはならなかったのです。

僕はもうすでに会社のソルジャーとして洗脳されている状態で、常に仕事のことを考えてしまっていました。

でも自分では全くそのことに気付いていませんでした。

その間、霊能力の開発をしていたことなんて、すっかり忘れ去り、霊感なんてない普通のサラリーマンとして仕事に追われる日々を過ごしていたのでした。

【次回予告】

会社のソルジャーとして完全に洗脳されていた僕。

自分のしたいことを押し殺して、抑圧ばかりしている僕にサインがもたらされることとなる。。

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